理系必見:高校での数学・理科(化学・物理)の公式の違い

2020.05.08 ブログ

数学には当然「公式」がある。
そして、化学や物理にも「公式」がある。

しかし、数学と理科では、その「公式」の使い方に大きな違いがある。今日はそれについて説明したい。かなり優秀な生徒でも、この違いをわからずに間違ってしまう場面を何度も見てきたので、これからは注意して勉強していってもらいたい。

数学という教科では論理的な厳密性が要求される。簡単に言えば、「100%でないものは0%と同じ」という姿勢である。99%成立することでも、何か1つでも成立しない例がでれば、それは「偽」、つまり「嘘」と判断しなければいけない。

そうした世界において、教科書に載っている「公式」や「定理」と呼ばれるものは、ほぼすべての状況で成立する、非常に便利なものばかりなのである。例えば、余弦定理や正弦定理は三角形であればすべての三角形に対して使えるし、二次方程式の解の公式は二次方程式であれば必ず使える。100%成立するものしか「公式」とは呼ばないのが数学なのである。だから、数学の公式を使うときは「その公式が使えるかどうか」をチェックする必要はほとんどなく、(本当はよくないのだが)何も考えずに使っても大きな問題はない。

それに対して理科の「公式」はどうか?

理科という教科は、実は数学に比べると非常に曖昧である。大学生の頃、一般教養で物理の授業を受けているとき、「この関数、微分できるかどうかわかんないけど、まあ物理だから微分しちゃいましょう」と教授が平然と喋っているのを聞いて衝撃を受けた覚えがある(微分可能性については高校3年の数Ⅲで習います)。

理科の目的は、現実世界で起こる現象を数式で説明することであるが、そこに厳密さはそこまで要求されない。簡単に言えば、「(数学的に厳密でなくても)現実の結果と一致していればOK」という姿勢なのである。例えば運動方程式F=maなんかも、「なぜこの式が成立するか?どこから来たのか?」などということはどうでもいい。「これが正しいと仮定して計算してみたら現実と合っている。なら、これは正しい、でいいじゃないか。」となってしまう。

そうした世界においての「公式」というものも、実は非常に曖昧なものである。その「公式」が成立しない、使えないという状況が数多くあるにも関わらず、「公式」と呼んでしまうのが理科なわけだ。例えば「力のつり合い」はいつでも成立するわけではなく、むしろ成立しないことの方が多かったりもする。「エネルギー保存」もいつでも成立するわけではない。しかし、上に述べた「F=ma」はいつでも成立する公式である。

何がややこしいかというと、物理・化学の「公式」は(数学のように)いつでも成立する「公式」と、ある特定の状況でしか使えない「公式」がごちゃ混ぜになっていることである。だから、理科で「公式」を使うときは毎回、「その公式、ホントに使えるの?」というチェックをしてから使わないといけない。そのためには前提の確認、つまり「どういう状況で使える公式なのか」を理解しないといけないわけだ。

今まで教えてきた中でも、(かなり優秀な生徒ですら)この違いをわかっていないために間違ってしまうケースを数多く見てきた。単振動で加速度が一定でないのに等加速度運動の公式を使ったり、力のつり合いが成立しないのにつり合いの式を立てたり、「H2Oが1モル(気体か液体かは不明)」なのにPV=nRTでn=1としてしまったりと、挙げればキリがない。

数学と理科の勉強の仕方はかなり違う。数学は基本事項に対する理解度よりも数をこなすこと、つまり演習量が重要なのに対し、理科では演習量よりも基本の理解が大切になってくる。「数学はそれなりにできるけど、理科が・・・」という人はこのことを意識して視点を変えてみるといいだろう。

以上!

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