三本木高から東工大に合格した生徒~昔と現在の塾の違い~

2020.09.26 ブログ

今年、三本木高からは2名の東工大合格者が出ているが、そのうちの1人はさくらアカデミー生で、自分が主に担当していた生徒である。 この生徒の指導を振り返ってみると昔と今の塾の違いがはっきりと見えてくるので、今日はこのことについて話そうと思う。

まず、この生徒がどういう生徒で、どのようにして合格したのかについて説明しよう。
この生徒を一言で表すと(言い方は悪いが)「質問魔」という言葉がピッタリだろう。とにかくよく質問をする生徒だった。 しかも、その内容はかなりハイレベルで、
(東大模試の数学について) 「解答には載ってない解き方でやってみたんですけど、途中で詰まっちゃって・・・この方法ではできないですかね?」
→一緒に考えた結果、この方法でも解けることが判明。


(東工大の数学過去問について) 「解答に解き方が3つくらい載ってたんですけど、①~③のうち、どれが一番ベストでしょうか?
自分は③だと思うんですが・・・」 →③は答えが見えていないと思いつかない方法だから、現実的ではない。
①が一番オーソドックスな方法だと説明した。

(センター試験の化学について) 「問題に『油状の物質』と書いてありますが、これは『油(油脂)』とは違うのでしょうか?」
→ここでの「油状」とは水と混ざらないという意味で使っているので、油とは限らない。

と挙げればキリがないのだが、こんな感じでどんな問題に対しても細部までしっかりと理解しようとする生徒だった。 1週間に2・3日しか塾には来なかったが、来たときは3時間休みなしで質問対応していたこともあり、よくもまあこんなにたくさん質問ができるものだと感心していたくらいである。

 

そういう性格だからなのかわからないが、成績は理数系特化型で、特に数学がずば抜けて良く、物理・化学は普通、英語イマイチで国社ズタボロ という状態だった。そして、(会った当初は)本番も数学で逃げ切って合格するつもりでいた。

「自分、暗記が超絶苦手なんで化学の有機とか捨てようと思ってるんですけど・・・」 「いやいやいや、バランスよく勉強しないとダメだよ。一発勝負なんだから、どれかで失敗しても他でカバーできるようにしておかないと・・・」

自分も数学が一番得意だったが、本番は数学で失敗したものの英語と理科でカバーして合格したので、そのことも伝えた上で「数学特化型は危険だ」と 説明した。

最初は半信半疑だったが、過去問を解いていくにつれ、このことを実感したようだ。

(数学が難しかった年度の過去問を見て)
「こういうときもあるから、他の教科でも取れるようにしないといけないんですね!」

一度必要性を理解したら、もともと能力の高く素直な彼は数学特化をやめて、すぐに手薄な物理・化学(特に有機)や英語などを中心に勉強しはじめた。 その甲斐あって本番では数学が計算ミスで失敗してしまったものの、理科で大成功、見事合格を勝ち取ったのである。

振り返ってみると、自分が彼に対してしたことはたった2つ、質問対応と勉強に関するアドバイスだけである(決して楽ではなかったが・・・)。勉強する参考書を指示したくらいで、こちらからの課題はほとんど出していないし、彼は塾のどの授業にも全く出席していなかった(もちろん、その分月謝はかなり安く設定)。さて、彼が塾に求めていたものはなんだったのだろうか?

自分が受験生だった20年前は、インターネットはなく、スマホはおろか携帯電話さえ普及していない時代で、そうした時代の塾・予備校の役割は、「単に知識や知恵を提供すること」だった。そしてどうやって勉強するかなどの勉強法は、自分で考えるのが当たり前だった。

そして現在、インターネットが普及し、youtubeなどでいい授業を無料で見れるようになり、ネットで調べれば良い参考書や問題集についての情報もみんなが見れるようになった。知識や知恵などの情報は、ほとんどタダで簡単に手に入れられるようになったわけだ。こうした流れの中、塾の役割は「知識・知恵の提供」から「合格へのレールを敷き、先に進めてあげること」へと変化してきた。より具体的には、どうやって勉強すればいいのか、自分はどの参考書をどれくらいのペースでやればいいのかなどの学習管理と、わからないところの質問対応である。

東工大に合格した彼が塾に求めていたのは、まさにそれであったのではないかと思うのである。

以上!

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