learn by 「heart」 ✕暗記する → 〇「心」で学ぶ

2020.04.02 ブログ

learn ~ by heart   意味:「~を暗記する」

自分がこの熟語に初めて出会ったのは高校生のとき。

「なんで『heart』が出てくるんだ?」と当時すごく不思議に思っていた。この疑問が解決するのはもっとずっと後、1ヶ月ほどオーストラリアに短期の語学留学をしていたときのことである。当時自分は大学院生であった。

オーストラリアという国はスポーツ医学などの医学・生物学が非常に発達していて、ノーベル賞受賞者10人中、なんと7人を医学・生理学賞が占めている(数学・物理学は全然ダメだが)。そのオーストラリアの科学番組を英語の授業で扱ったのだが、そのときのタイトルが「celluar memory」というものだった。

「脳だけでなく、手や足、臓器などの細胞一つ一つにも記憶がある」という仮説で、この仮説ができたきっかけは、移植のときに起こる記憶転移である。

・腕を移植してもらったら、今までに見たこともないような難しい単語が頭に浮かぶようになり、スラスラと書くこともできるようになった。調べてみたら腕の提供者の職業は医師であった。

・肺の移植手術を受ける前は内向的でインドア派、運動など大嫌いだった人間が、手術を受けた後は性格が真逆に変化。外向的・社交的になり、さらに毎日スポーツジムに行き10km走るようになった。肺の提供者はスポーツ選手だった。

こうした事例が次々と報告され、なぜこのようなことが起きるのかを説明する仮説が、先に述べた「各細胞ごとに記憶が存在する」という説である。この仮説が正しければ、この現象がなぜ起こるかの説明になっていることは理解してもらえると思う。

さらに面白いのは、「移植される部位によって、移る記憶の量が違う」ということである。手や足よりも肺の方が多くの記憶が移るそうだ。それでは、移植のときに一番記憶が移りやすいのは、体の中のどの部分なのか?

研究者が調査を行ったところ、その答はなんと「心臓」、すなわち「heart」である。

その番組では、覚え立ての知識や経験はまず頭に保存されるが、それが定着していくにつれ、記憶が頭から心臓にも伝わり、そこから体の各部位へ伝わるのではないか?と説明していた。この説はまだ科学的に立証はされていないが、自分には思い当たる節がある。

(以下、自分の推測を含みます)

はじめはただ覚えていただけの知識が、ある瞬間に「そういうことだったのか!」と本当の意味で理解できたという経験がある人は多いと思う。これがまさに頭から心臓に記憶が伝わった瞬間なのではないだろうか?

そして、これが起こったときは例外なく嬉しい。まさに「心」が動くのである。

こうして覚えたことというのは、復習などしなくても例外なく長期間、人によっては一生記憶に残る。トラウマに代表されるように、「感情を伴った記憶が一番残りやすい」ということ自体は科学的にすでに立証されている。中学・高校の感受性が高い時期に経験したことは、大人になっても忘れないという事実や「好きこそものの上手なれ」ということわざは皆知っているだろう。

勉強をするときも、このことを意識して行うのが一番いいと思う。自分の中で楽しさなどの感情が生まれるように、「この公式が成り立つ仕組みを理解しよう」「これは世の中のどこに役に立っているのか?」という視点で取り組んでみるといい。そして自分1人で厳しい場合は、自分の中にそうした感情を引き起こしてくれるような先生を探してみるといい(それができる先生は多くはないけれども)。

もちろん教える側も、生徒にそういう感情を引き起こすような教え方を研究することが必要である。自分はこれを意識して教え方を色々考えてきたが、今のところそれなりにいい成果が上がっている。

長くなってしまったが、「learn by heart」という熟語は、実は学習の本質をたった3語で表しているのかもしれない、と思うわけである。

以上!

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